
第二話『母の死、出会い』 1986年4月某日 ……お母さんが死んだ。 なんで死んだかはよく分からない。 お父さんにつれられてお母さんが入院している病院にいったら、ねむっているお母さんを見つけた。 お父さんはお母さんを見るなり眠っているお母さんにくっついて泣き出した。 お父さんの泣き顔ははじめて見た。 「おとうさん。そんなに騒いだらおかあさん起きちゃうよ。」 近づいた僕をお父さんは顔をくしゃくしゃにして抱きしめた。 凄く……痛かった。 「健介……健介……ゴメンな……ゴメンな……。」 「どうしたの?」 「すまん…すまん…本当に…すまん……奈津子……うわぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁ……。」 「……」 大声でお母さんの名前を叫ぶお父さん。 その様子に声が出なくなった。 お父さんは泣き止んだ後、お母さんが死んだという事を説明してくれた。 「健介、お母さんはもういないんだ。………死んだんだよ。」 話しをしてるときのお父さんはとても疲れた顔をしていた。 何言ってるの?お母さんいるじゃん。寝てるだけじゃん。すぐに起きて笑っておはようっていってくれるよ。ねえ……お母さん…… その後、お母さんのお葬式が終わって僕はお父さんの生まれた家に住むことになった。 お父さんのおじいちゃんとおばあちゃんはもういないらしい。 これからはお父さんと二人で暮らすんだとお父さんは言った。 家は古く、お父さんが仕事に行ってしまうと僕はひとりだった。 ひとりで家にいるのが怖くて外に出た。 近くにあった公園に来た。 僕と同じ位の歳の子が遊んでいる。 知らない子ばっかり………。 そんなの当たり前、引っ越してきたばかりなんだから…… でも、僕にはおかあさ…… (あっ……お母さん……もういないんだ……) そう思ったとき涙が出てきた。 何度目を擦っても止まらない。 「う…っ…あぐ……うあ……ん…。」 声まで出てきた。 僕はここでひとりなんだ。 誰も僕を知らない。 いつも一緒にいたお母さんもいない……。 !! そのとき、僕はお母さんがいない、死んだ事を身体中で実感じた。 もう涙は止まらない。、 (お母さん、お母さん、お母さん、おかあさん、おかあさん……なんでいないの。どうして、僕をひとりにしないでよ……。) 「おかあさ〜〜〜〜んあああああああああん……。うわあああああああん。」 自分の声がどれだけ大きいかなんて分からなかった。 大人の人達も僕の事を見ていたのがうっすらと分かった。けど ただお母さんに来てほしかった。いつもどうりおこったり、やさしく頭をなでて欲しかった。「なんで泣いているの?」って聞いて欲しかった。 もうどれくらい泣いたか分からなくなってきた時 「なんで泣いてるの?」 蹲っていた僕の頭の上で声がした。 ……お母さん? そこには知らない女の子がいた。 「なんで泣いてるの?」 女の子はもう一度聞いてくる。 「なんでもない!!」 なんでわからないけどこの子に泣き顔を見られるのが嫌だった。 「ふ〜ん……」 女の子はさして気にしている様子もない。 というか、泣いていなければ別にいいといった感じだった。 「一緒にあそぼ!!」 「えっ!?」 「あたし最近ここに引っ越してきたの。」 「……僕も………」 「えっ、そうなの?じゃあ、あたしと君はお友達!!」 そう言って女の子は手を出してくる。 「?」 「握手だよ。握手!!お友達の始まりは握手とお名前だってお父さんが言ってたの。」 女の子はさらに手をズイッと近づけてきた。 ゆっくりとその手に触れる。 (あったかい……。) その手は大きさこそ違うもののお母さんの手と同じ温かさがあった。 女の子は僕の手をもう離さないというほど強く握った。 「友恵。あたしの名前は比奈本友恵。君は?」 「僕は……村上……健介。」 「ヨロシク健介くん!!」 友恵ちゃんが笑った。それにつられて僕も笑った。いつのまにか笑っていた。 今会ったばかりの女の子に僕は心を許していた。 すこし不安もあったけど、ここで僕はひとりじゃないと感じる事が出来た。 お母さんにも笑えるようになれると思った。 母さんの死んだ春に引っ越してきた知らない土地の公園で泣いていた俺は友恵とはじめて出会った。