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第一話 『クラスメイトの彼女』
   1998年7月

  …あつい……。
授業が始まって三十分。いい加減、教師のたわごとにも飽きた。
いくら受験生だからって毎日こんなつまらない事繰り返していられない。
しかも七月。夏の入口。蒸した教室での授業はまさに我慢大会。
俺は時計を見ながら時間が少しでも早く過ぎてくれる事を祈った。


 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン……。

「だぁぁぁぁぁ…終わった……。」
固まった身体を伸ばし、机に全身でへばりつく。
もう何もしたくないっす。
「おーおー。へばっとるのー……健介。」
「………」
面倒くさいヤツが来た。
とりあえず消えてくれと願うがその願いも叶わず、そいつは楽しそうに俺の机の側によってくる。
「何か用か?誠也。」
仕方なく顔を上げ誠也の方を向く。
「そう嫌な顔をするな。とっておきのニュースを教えてやろうと思ってな。」
「あん?」
俺が不思議そうな顔をすると誠也は窓の外を向くよう指示してきた。

そこからは下校していく生徒の群れが校門をくぐっていっている。
その先にはこの学園名物のキツイ坂が……。

「そっちじゃない。こっち!!」

誠也が指差したところには俺達と同じ三年の制服を着た男子と女子が……いわゆるカップルというやつだ。

「鳴海と涼宮だ。最近付き合うようになったらしい。」
「鳴海?」
俺が名前を聞き返すと誠也は「ヤレヤレ」といった感じでため息をついた。
「おまえなぁ〜……。もう一学期終わるんだからクラスの奴の名前くらい覚えとけよ……。一緒にゲーセン行ったこともあったぞ。」

悪かったなぁ。俺は人の名前覚えるの苦手なんだよ。
……しかし、一度遊んだ事のある奴の名前ぐらい覚えておかないとマズイかも。

「涼宮の方は……分かるよな?」
「ああ、体力測定を長靴で走った……。」
「そうだ!……くははは……。」

そう答えた誠也はその時の事を思い出して笑っている。
まあ、あれには俺も度肝を抜かれた。
覚えの悪い俺にも彼女の名はしっかり頭に刻みつけられている。



一年の時の体力測定、当日の朝は雨が降っていた。
しかし、雨も午後には止み、予定どうり測定は行われた。
そんな中、クラスに高校にもなって長靴をはいてきたツワモノの女子がいたのだ。
その女子が涼宮さんだ。
彼女は長靴で体力測定をまわり、それぞれの測定の度に周囲を沸かせた。
特に50メートル走は伝説の粋にたってしていた。
また彼女の可愛らしさがその伝説に拍車をかけたらしい。

それに……彼女は……



「涼宮はおとなしいけど可愛いからな。儚げなお嬢様って感じでヤローどもが騒ぐのも当たり前かもな。」
そう言う誠也の背後には窓から二人を眼で追う男共がいた。
うちのクラスにもファンがいたって事か。
まあ、アイツが涼宮さんの……ってことなのだろう……
おめでとう………涼宮さん……

「で、鳴海ってのは?」
そんな隠れファンがいるくらいの娘と付き合うっている奴に少しの興味が湧いた。
誠也はすこし悩んでいるような顔で俺の質問に答える。
「うーん……、まあこれといってカッコいいわけでもないし……普通の奴だな。」
「なんだ、そりゃ……」
「当人同士にしか分からない良さっていうのがあるんじゃないか?」

誠也の言葉に少し納得してもう一度、ふたりのいたほうを見てみた。
既にふたりは小さな米粒のようになって人ごみに紛れ、見つける事はできなかった。



「帰るか」
空のバックを担ぎ誠也に呼びかける。
「ああ」
誠也もバックを持ち、二人で教室を出ようとした。
その時、

「孝之、ちゃんとやってるかなぁ?」
心配そうに話す女子の声。
「大丈夫だよ。ああ見えてあいつ、結構しっかりしてるし……」
女子をなだめる男子の声。
「遥、泣かせたらただじゃおかないんだから。」

いつもならスルーしてしまうような他人の会話に少し意識がいった。

そんな俺に
「おい、どうした?」
誠也が俺の目の前で手を振ってくる。
「あ、いやなんでも無い。行こう……。」
「!?なんだかな〜……。」

何となくボーっとしていたのが恥ずかしくって、それを隠すように急ぎ足で教室を出た。

自分の中で中で鳴海という男に少し興味が湧いてきていた事は俺自身でも気づかずに……



次の日から俺は気付くと鳴海孝之のことを目で追っていた。

まさか……恋!?
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや…………。
俺はいったてノーマル。ホ○やゲ○などでは断じてない!!

そんな事は置いとくとしても、
俺は朝からずっと奴らが気になっていた。

鳴海孝之のまわりにはいつも二人のクラスメイトがいる。

ひとりは平慎二という男子生徒。
鳴海孝之とは長い付き合いらしい。
大体何処に行くにも一緒にいる。
いろんな奴とも仲良く話していて、誠也とも話しているところもよく見る。
俺も結構話しかけられている……と思う……

もうひとりは速瀬水月。
この白陵柊学園では知らぬものはいない女子水泳部の星。
誠也が水泳部だったので結構前から知っている。(が話した事はもちろんない)
その上、勉強も出来て、美人などというパーフェクト超人?で彼女を狙っている男も多いらしい。
彼女のおかげで学園に室内プールの建設が決まったほどだ。
進路も実業団からお呼びがかかっていて、受験で苦しんでいる俺とは大違いだ。

そんな三人は三年に上がってすぐ位から固まって行動していて、ドリカム(死語)などとまわりからいわれているとかいないとか……

「……また鳴海達を見てたのか?」
気付くと俺の横に誠也が立っていた。
こいつが横にきている事に気付かないとは……
「お前が特定の人に興味が向くなんて珍しいな。」
「……そうか?」
誠也はいつもの調子で
「お前とは長いからな。なんでも分かるぞ。尿意の周期までな。」
「キショいからやめろ……」
鳴海達から目を離し、考えていたことを忘れるように机に突っ伏した。

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン……


今日の放課後も鳴海は涼宮さんと一緒に帰っていった。
それを教室の窓際から見ている俺。
その横ではムサイ男数名。
さらにその向こうに平と速瀬さんが二人を心配そうに見ている。
この間の会話はこの二人だった。

クラスの所々で二人の話題が挙がっていた。
誠也もそのうちの一人だ。

でも……俺は……どうしてもその輪に入れなかった。

だって……

「俺……、あの二人なんかカップルに見えないんだけど……」

何気なく出た言葉だった。
もちろん涼宮さんと鳴海との関係が気に入らないからではない。
隣にいた誠也が驚いた顔でこちらを見ている。
他の奴らも……

俺そんな大きな声で言ったか!?
当然、平と速瀬さんも俺を見ている。
………
多くの目が自分に集まるのは、なんだか気分が悪い。

「帰る!!」
バックを担ぎ、席を立つ。
教室をでるまで俺はクラス中の視線を集めまくった。

(ジロジロ見てんじゃねーよ!!)

集団の方を睨みつけると全員、目そらした。
まったく……イライラする。

バン!!
力任せにドアを閉めて教室を出た。

「おーーい!!健介!」
校門についた辺りで誠也が追いついてきた。
教室から俺を追いかけて走ってきたのか?
まったく難儀な奴だ。

「いきなりキレて教室出ていくなよ。」
息を整えながら誠也が言う。
その言葉を聞いて自分の中の怒りがしぼんでいくのが分かった。
ささくれ立った気持ちの変わりに、心配してくれる聖也への申し訳なさが募っていく。

「……すまん」
「ん…まあ、気にするな。クラスの奴らには俺からフォロー入れといたから。」
誠也には昔からこういう時に世話になりっぱなしだ。
こいつがいなければ俺はいつまでも一人、誠也以外の友達なんか出来なかっただろう。


「ありがとうな……」
「言っただろう。お前の事はなんでも知ってるって。冗談抜きでな。」
そう言って悪びれない笑顔を向けてくる。
コイツの辞書に「気恥ずかしさ」という言葉はないのだろうか。
「ゲーセンでも行くか?」
「ああ。」
俺の提案に快く頷く誠也。
いろいろ面倒くさい奴だけど、これからもコイツとツルむことが多いのだろう。
コイツだけは俺のことをちゃんと分かってくれると信じられる友人だから………


ぼふ……。
身体がベットに吸い付くように倒れ込む。
あの後、誠也と八時すぎまでゲーセンで遊び、その帰りにコンビニで飯を買ってきた。
完全な一人暮しになって一年ちょっと、
多少は自炊も出来るようになったが、まだまだコンビニ弁当の世話になっている。
そのため毎日金欠だ。
今日だって誠也に金を借りてたりする。
父親は単身赴任というか、なんというか、今は離れて暮らしている。
母親は……俺が小さい頃に病気で死んだ。
その辺の事情を知っている誠也や誠也の両親はよく晩飯に誘ってくれる。
とても有難いことなのだがあまり甘えるわけにもいかない。

「はあ……」

自分でも気づかぬうちにため息。
最近多くなってきて感じがする。
疲れてるのかな?
今日だっていつもは気にしないような事にも腹が立ってクラスメイトを睨んでしまった。
おかしいな……俺……
他人のことなんてどうでもよくなっていたのに………

それなのに……
涼宮さんのことも気になっているし……
鳴海たちの事だって……
ほんと……どうしたんだろう……俺。
いろいろなことを考えながら俺は疲れに誘われるまま、眠りに落ちていった。




あとがき どうもこんにちわ(こんばんわかも…)まだまだ精進が足りない子泣き丸です。
ここまで読んでくれた方は分かったかもしれませんが、この「君のぞアナザーエピソード(
略.君のぞAE)」はゲームの主人公 鳴海孝之ではなく、そのクラスメイト村上健介が主
人公の話で彼の目線から君のぞの舞台を見ていこうというものです。面白いかもと始めてみ
たのですが、ゲームやアニメの時間軸に合わせて書いていくのは思ったより難しいです。オ
リジナルのキャラ以外はどのように動かすかほとんど決まってしまっているので独自のシナ
リオと原作との帳尻が難しいです。
まあ、私の文句など読んでいてもつまらないと思うのでこれくらいに…
さて、この物語の主人公の村上健介…ん、、えっ!?時間が無い?……時間もなにも関係な
いジャンこれ……って、ウワーーー!!何だ??お前ら!?!?ウゴッ!?(ドサリ…)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブツン!!
                       (2005/9/6 子泣き丸)

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