第五話『縁日での再会』
8月15日
おっ!!うまそう……ドネルケバブか。
新顔の出店の前で買うかどうか迷う。今月、結構ピンチだからな……
それもこの間のゲーセンのせいだ。
つい調子に乗って誠也とバーチャルノンで総力戦しちまったからな……
………………
って、違うよ。
俺、なんで一人で祭りなんて来てるんだよ。
この上なく淋しいじゃないか。
たまたま橘町に来たら祭りがやってて、誰か知り合いがいるかなって思って顔出したけど……見事に当てが外れたな。
帰るか……
「あれ〜〜〜?この間の……」
目の前の人ごみから聴いたことがあるような声。
んっ!?
浴衣を着たちんまい女の子がこっちに向って駆けて来る。
あれは……水泳の時の……確か、アカネちゃん……だったけか?
「先輩、こんなところに一人で何しているんですか?」
それは俺が俺自身に問いただしたい。
っていうかいつから俺は君の先輩?……まあいいや。
「まあ……散歩がてらにね」
「……ふぅん」
アカネちゃんがふくみのある笑いでこちらを見ている。
この上なく恐ろしく感じるのは何故?
んっ!?
なぜ俺は年下の女の子に恐怖しなきゃならんのだ。
「まあ、いいや。先輩。一緒にお祭り廻りませんか?」
「えっ?」
「先輩も一人、私も一人、いいじゃないですか」
なにがいいのか分からん。
「ああ…まあ……いいけど……」
「じゃあレッツゴー!!」
アカネちゃんは俺のTシャツの裾を引っ張って出店の列の奥へ走っていく。
この前も思ったがこの娘かなり強引だな。
なんかすっかり彼女のペースだ。
「へぇ〜…村上先輩って言うんですか」
「うん。君は確か……アカネちゃんだろ」
「えっ!?なんで私の名前知ってるんですか?」
アカネちゃんが驚いて俺から距離を取る。
「いや…この間の大会で友達にそう呼ばれてたじゃん」
急いで彼女の勘違いを訂正する。
「あ、そうなんですか。てっきり、私のこと調べたり、ストーキングしたりしてたのかと思ったよ」
……一瞬ひいたのはやっぱりそういう事か。
すぐさま言い返せて良かった。
ストーカーにされたらたまらん。
「まあイイヤ。漢字は茜色の茜って書くんですよ。そこんとこヨロシク!!」
「へ〜〜……」
まあそうだろうと思ってた。
っていうかそれ意外思いつかん。
「先輩って、水月先輩と同級生なんですよね?」
「ああ」
「じゃあ、お姉ちゃんとも一緒ってことだね」
「?お姉ちゃんいるんだ」
「うん。今日もお姉ちゃんがここに来てるってお母さんが言ってたから、奢ってもらおうと思ったんだけど……」
当てが外れてお姉ちゃんはいなかった、と……。
まあ、この子のお姉ちゃんならきっと性格似てはっちゃけているんだろうな。
「そのお姉ちゃんって、どんな人?」
「ん?ああダメだよ。お姉ちゃん彼氏いるから」
……別に狙ってないよ。
なんかもうどうでもよくなってきたな。
その後、俺は茜ちゃんにすっかり主導権を取られて沢山の出店を廻らされた。
しかもほとんど俺のおごりで……
月末までもつかな?
「あ〜楽しかった!!」
「はは……。そりゃよかったね……」
その分俺の財布が軽くなったけどな。
苦笑いしかでないよ……。
「まあいいじゃないですか。可愛い後輩に奢ってあげたと思えば……」
「あのネ。俺は君みたいな後輩持った覚えはないけど」
俺の精一杯の愚痴も茜ちゃんにはまったく届かなかった。
俺達は電車が込むのを考慮して、一本ずらして電車に乗り柊町に帰ってきた。
「今日はありがとうございました」
別れ際、茜ちゃんがお礼をしてくれた。
まあ、財布は軽くなったけどそれだけ喜んでくれたなら悪い気はしない。
「ああ、こちらこそ楽しかったよ」
「……」
茜ちゃんが俺の顔をじっと覗いてくる。
「な、なに?」
「あ、いえいえ。先輩、お兄ちゃんに似てるなって」
「お兄ちゃんもいるの?」
「お兄ちゃんって言うのは、お姉ちゃんの彼氏。お姉ちゃんと結婚するからお兄ちゃんでいいの!!」
……なんつー安易な考え。
その彼氏も茜ちゃんに振りまわされているのが容易に想像できるぞ。
「お兄ちゃんも村上先輩とおなじでカッコいい訳じゃないけど―」
がくっ… 思わず膝の力が抜けてしまう。
「でも……結構優しいんだ」
笑顔で語る茜ちゃんからその彼氏とお姉さんがうまくいっている事が容易に想像できる。
茜ちゃん、その彼氏のこと慕っているんだな。
「じゃあ、私はこの辺で。あんまり遅いとお母さん心配するから」
「ああ、じゃあね」
茜ちゃんは現れた時と同じはやさで路地を曲がり、姿を消した。
「ふう……」
なんか嵐のような子だった。
なんだが色々あってドッとつかれたな。
ちょっと祭りを覗くつもりがこんな事になるなんて……
まあ、茜ちゃんとも知り合えた。
というか、久しぶりに初対面同様の人と楽しくやれたかな。
空を見上げると満天とまではいかないまでも沢山の星が俺の視界を覆った。
こう思える事も俺自身の変化なのかな………
あとがき ひき続き茜登場!!・・・まあ、今回はこれくらいしか伝えること
がない。ただ健介と茜の掛け合いは書いていて楽しいので自然とタイピング
が進む進む!!
ではこの辺で・・・
(2005/9/9 子泣き丸)