『目覚め』
何もない静かな暗闇で私は目を覚ました。
目を覚ましたといっても実際に目を開けたわけではない。
気がついたらこの場にいたと言う方が正しいように思える。
きっとここは私の内側。
私が目を覚ましたと言うことは『私』と言う『世界』が目を覚ましたということ。
この場所も少しずつ風が流れ始め、光が辺りを照らし始める。
ほら……
『世界』が記憶していた出来事が私の中に流れ込んできた。
私のお母さん、私のお父さん、私の妹、私の親友、私の………私の……一番大切な人……
家、柊町、橘町、通っていた学校、通学路、プール、駅、受験、夏休み……
彼に本当の気持ちを伝えたあの丘、彼と一緒に食べたミートパイ、泳いだプール。
四人で一緒に撮った写真、そして夏祭り。
学校の友達、毎日のように一緒にいた親友……………夕日が差し込む教室
思い出す記憶の中、私が何処の誰であったか思い出してきた。
…………彼に会いたい。
私の一番大切な人。
一番好きな人。
絶対に失いたくない人。
扉が表れた。
本当の目覚めの時。
躊躇無くノブを掴んだ。
私はこの部屋を後にする。
自身でも気付けないほどの些細な違和感を残して……
目を覚まして最初に見たのは目に涙を溜めて私の顔を覗きこむ女の子の顔だった。
「……お……お姉ちゃん」
「………茜」
三年の月日を経て動き出した本当の時間……
ここからが物語の本当の始まり。
また……あの季節がやってくる。
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