/鬼〜イブツ〜/
1−1
早歩きで路地を曲がる。
友人たちと別れてどれだけの時間が経っただろう。
自分だけ帰る方向が違うため、必然的に一人。
今は街路灯だけが自分の心の拠り所だった。
いつもは母からは、
「遅くなる時は気をつけなさい」
と口を酸っぱくして言われている。
自分だって親の言いたい事、何より自分の身を案じてくれているくらい解っているつもりだ。
加えて最近のこの地域の治安。
『連続女子学生誘拐事件』
数ヶ月前から発生したこの事件。
すでに被害者は二桁になろうとしていた。
街中では警察の姿を頻繁に見かけるし、学校の教師を生徒が登下校するときには通学路に立っている。
そのお陰か町内での揉め事や小さな犯罪は減ったが、
当の事件の犯人はその実態を掴ませないし、事件自体も続いていた。
学校側も部活の前面休止、生徒の登下校は集団厳守として生徒の安全を守ろうとしていたが、
そこは若者の無鉄砲さからか危険を感じていなかった。
そんな中でも自分は親の注意もあってかそれなりに身の安全を考えてはいたのだけれど……
生徒会役員にも所属している身としては放って置けるほど今期の経費のやり繰りは楽ではなく、
他の役員と頭を寄せ合っていたら見回りの教師に大目玉を受けたという訳だ。
なら教師が経費の管理をしてくれればいいのだが、
『生徒の自主性を尊重し、能力の開発、向上を目的とした……』
とかなんとか、の堅苦しい校風を盾に教師は面倒事の殆どを生徒に押し付けている。
まあ、授業や進路についての相談は確りしているので文句は無いのだが……
こんな時期までそれを言い訳にしないでもらいたい。
彼らは私たちを守りたいのか、危険に晒しておきたいのかどちらなのだろうか……
そんな風に教師への文句を募らせているうちに我が家が目視できるところまで足が進んでいた。
少し安心。
やっぱり女の独り夜は怖いものだ。
早歩きを駆け足に……
我が家(安全)を確かなものにしようと足を廻す。
と瞬間、背中に存在を確認。
目の端に見えた人物像。
止せば良いのに好奇心が恐怖心を超える。
怠慢の興味が警戒の感覚を凌駕する。
安心への距離を測り間違えた自分の行為。
私はゆっくり振り返る。
目の前の人物を視認。
当然の台詞を発した。
「……あれ、如何したの??……」
私はそこで意識を刈り取られた。
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